ソフトマテリアル応用部会 部会主催講演会

ソフトマテリアル応用部会では,「人工筋肉」として注目を集めている機能性高分子材料の研究開発,応用の状況を調査するとともに,さまざまな産業分野への普及を図ることを目的として活動しています.この度,第19回 計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2018) (12月13日(木)〜15日(土))での本部会が企画しておりますOS(OS7:人工筋肉を目指したソフトアクチュエータ・センサ)の開催に合わせまして,12月12日に下記講演会の開催を計画いたしました.

実施概要

プログラム

15:00-15:05開会の挨拶・部会紹介
15:05-15:35[講演1] 「ソフトロボティクスの動向と課題」
   新山 龍馬 先生(東京大学)
15:35-16:05[講演2] 「ソフトマテリアルを用いた機械式発話ロボット」
   遠藤 信綱 先生(東京電機大学)
16:05-16:15休憩
16:15-16:45[講演3] 「信州大学繊維学部西川・岩本研究室における線形状・面形状アクチュエータの研究」
   岩本 憲泰 先生(信州大学)
16:45-17:15[講演4] 「ナノシート液晶を用いた伸縮異方性ゲルアクチュエータのロボット応用」
   木野 仁 先生(福岡工業大学)
17:15-17:20閉会の挨拶

講演概要

[講演1] 「ソフトロボティクスの動向と課題」
新山 龍馬 先生(東京大学)
柔軟材料を積極的に利用したロボットに関する学術分野であるソフトロボティクスについて,国際動向を概観する.ソフトロボットのためのコンポーネントとして,やわらかいアクチュエータが活発に研究されている.人工筋肉と呼ばれるソフトアクチュエータは数多いが,それぞれ長所短所がある.ソフトアクチュエータに求められる特長について考察する.その他,プリンタブルロボット,インフレータブルロボットといった新しい形式のロボットや,やわらかい身体に根ざした知能について,研究例を紹介する.

[講演2] 「ソフトマテリアルを用いた機械式発話ロボット」
遠藤 信綱 先生(東京電機大学)
ヒトの音声発話は肺・気管,喉頭系(声帯・喉頭蓋周辺)および口腔系(咽頭・上顎・口蓋・舌・下顎・歯・口唇)の各部位の運動による.肺からの呼気流により声帯が自励振動し喉頭原音を発声し,口腔内の形状変化により喉頭原音の共鳴周波数を調整することで母音を発話し,また,呼気流を口腔内で一時的・局所的に阻害することで子音を発話する.講演者はこのようなヒト音声発話を機械式発話ロボットで再現することを目指している.本講演では,ソフトマテリアルによる機械式発話ロボットの開発について紹介する.

[講演3] 「信州大学繊維学部西川・岩本研究室における線形状・面形状アクチュエータの研究」
岩本 憲泰 先生(信州大学)
信州大学繊維学部,西川・岩本研究室では安価な医療ロボット,革新的な医療ロボットのために線形状・面形状のアクチュエータの研究に取り組んでいる.線形状のアクチュエータとして2014年にHainesらによって提案されたツイストされた,ナイロン繊維を加熱・冷却することで伸縮動作を得るSuper Coiled Polymer アクチュエータについて研究している.同時に製作による個体差の削減を目的として,製作工程を自動化する撚糸機についても開発している.また,面形状のアクチュエータとして上面の半径を可変とする円錐台型のソフトアクチュエータを開発し,これを集合させた曲面型のメッシュロボットを提案している.本発表では,上記の2つのテーマについて紹介する.

[講演4] 「ナノシート液晶を用いた伸縮異方性ゲルアクチュエータのロボット応用」
木野 仁 先生(福岡工業大学)
ソフトアクチュエータは,素材自体の柔軟性から,次世代のロボットアクチュエータとしての応用が期待されている.本報告ではロボット応用を視野に入れた,ナノシート液晶を用いたゲルアクチュエータを紹介する. 本ゲルアクチュエータでは,全体の90%近くを水で占めている.従って,親水性に長けており,水中にて使用する.水中のゲルアクチュエータは加熱されると,内部に保持した水分を外部に排出し,縮小する.一方,で冷却すると外部の水分をアクチュエータ内部に取り込み,膨張する. 大きな特徴の1つとして.電場などを与えてナノシート液晶の方位性を揃えることで,収縮方向に異方性を持たせることができる.